大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所宮崎支部 昭和48年(ネ)61号 判決 1975年1月20日

主文

一  原判決中、控訴人佐伯崇裕敗訴の部分を次のとおり変更する。

1  控訴人佐伯崇裕は被控訴人に対し、金九二万六、四七二円及び内金八〇万六、四七二円に対する昭和四五年七月一一日から、内金一二万円に対する昭和四八年五月一六日から各完済まで、いずれも年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人の控訴人佐伯崇裕に対するその余の請求を棄却する。

二1  原判決中、控訴人佐伯光信敗訴の部分を取り消す。

2  被控訴人の控訴人佐伯光信に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じ、被控訴人と控訴人佐伯崇裕との間に生じた分を三分して、その一を同控訴人佐伯崇裕の、その余を被控訴人の各負担とし、被控訴人と控訴人佐伯光信との間に生じた分を被控訴人の負担とする。

四  この判決は第一項の1に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴人ら

「原判決中控訴人ら敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決

二  被控訴人

「本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は、控訴人らの負担とする。」との判決

第二当事者の主張並びに証拠関係

次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の事実摘示のとおりである(ただし、原判決六枚目表末行目の「第二八号証の一ないし七」とある次に「(いずれも写し)」を加え、同枚目裏一行目に、「吉井ハツエ」とあるのを「吉井ハツヱ」と改め、同四行目に「甲号証の成立」とある次に「(同第二八号証の一ないし七については原本の存在とも)」を加える。)から、これを引用する。

一  被控訴人の主張

1  原判決二枚目裏九行目に「所有であり、」とある次に「本件事故発生当時、」を加える。

2  控訴人佐伯光信の後記二の3の自白の撤回には異議がある。

3  控訴人佐伯崇裕と被控訴人の本件事故についての過失割合は、前者が九、後者が一とみるのが相当である。

4  被控訴人主張の逸失利益の算定が不可能な場合には、慰藉料の算定にあたり右の事情を考慮に入れてその額を決すべきであり、その場合の慰藉料額は金二〇〇万円が相当である。

二  控訴人らの答弁並びに主張

1  控訴人両名

(一) 原判決五枚目裏三行目に「同二の事実は不知」とあるのを、「同二の事実は、そのうち、被控訴人が頭部外傷第Ⅱ型、腸管破裂、骨盤骨折の傷害を受けた事実は認めるが、右股関節脱臼骨折の傷害を受けた事実は否認し、その余の事実は知らない」と訂正する。

(二) 原判決事実摘示中の請求の原因四の(四)の事実は否認する。

2  控訴人佐伯崇裕

原判決五枚目裏三行目から同四行目にかけて「同三の(一)、(二)の事実は認める」とあるのを、「同三の(二)の事実は否認する。本件事故は専ら、被控訴人の過失により発生したものである。すなわち被控訴人は、飲酒酩酊のうえ、横断歩道の先六・八メートルの地点から横断を始め道路中央線付近まで行つたかと思うと急に逆もどりするような姿勢をとり、二、三歩進んだ瞬間、本件自動車に衝突したものであるから、本件事故の発生について控訴人崇裕には過失がない」と訂正する。

3  控訴人佐伯光信

控訴人佐伯光信は、当審においてはじめ、原判決事実摘示中の請求の原因三の(一)の事実を一旦認めたが、これは真実に反し、かつ錯誤に基づいてしたものであるから右自白を撤回し、前記付加(「本件事故発生当時、」)後の右請求原因事実は否認する。

すなわち、本件自動車の登録上の所有名義人並びに買受名義人は控訴人佐伯光信となつているが、それは控訴人佐伯崇裕が自己の運行の用に供するため、本件自動車を購入するにあたり、同控訴人は銀行取引もなく、信用も薄いところから銀行取引があり、信用度も高い父である控訴人佐伯光信の名義を使つて購入したことによるものであつて、その代金の支払も控訴人佐伯崇裕においてなし、その使用も同控訴人が専用に供していたもので、控訴人佐伯光信がこれを利用したことはない。したがつて、控訴人佐伯光信は本件事故につき運行供用者責任を負うものではない。

三  証拠関係〔略〕

理由

第一  被控訴人の控訴人佐伯崇裕に対する請求について

一  昭和四四年三月二五日午後九時五五分ころ、宮崎県東諸県郡高岡町大字五町二五四の二の巣山石油店前路上において、同道路を横断歩行中の被控訴人に、控訴人佐伯崇裕運転の本件自動車が衝突したことは当事者に争いがなく、この事実に〔証拠略〕を総合すると、被控訴人は右事故により頭部外傷第Ⅱ型、腸管破裂、骨盤骨折、右股関節脱臼骨折の傷害を受けたこと、右甲第五号証(医師岩切清文作成の診断書)の病名欄に「右股関節脱臼骨折」の記載がないのは、骨盤骨折が表示されているところからこれが省略されたかあるいは記載もれのいずれかにすぎないことが認められ、当審における控訴人ら各本人尋問の結果中右認定に反する部分は、〔証拠略〕に照らしていずれも採用できないし、他に同認定を覆えすに足りる証拠はない。

二1  そして、右一の事実に〔証拠略〕を総合すると、本件事故現場付近の道路は、小林市と高岡町間の東西に通ずる幅員約八・三メートルのコンクリート舗装の平たんな国道一〇号線で、速度制限はなく、見通しもよいが、本件事故当時は夜間で霧雨が降つており、周囲は暗かつたこと、控訴人佐伯崇裕は前記のとおり本件自動車を運転して、小林市方面から高岡町方面に向け、時速約六〇キロメートルで西進し、本件事故現場の手前にさしかかつたところ、前方約三七メートルの道路左側端付近に、横断を始めるような姿勢で歩行中の被控訴人を発見したので、軽くブレーキを踏んだが被控訴人が車側線付近で立ちどまつたようにみえたので本件自動車の進行に気付いたものと速断し、時速五〇キロメートル位の速度で漫然と衝突地点の約一九メートル手前まで進行したところ、なお、まつすぐに右国道を横断してくる被控訴人に気付き危険を感じて急ブレーキをかけ、ハンドルを若干左に切つたが及ばず、本件自動車の進路中央線寄りの地点を横断中の被控訴人の臀部右横部分に本件自動車の右前照燈付近を衝突させたことが認められ、これに反する当審証人鈴木和子の証言は、前記各証拠に照らして採用できないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  ところで、右の横断を始めるような姿勢で歩行中の被控訴人を発見した際の前認定のような事情のもとにおける控訴人佐伯崇裕の立場にある自動車運転者としては、そのような歩行者の動静を注視し、必要に応じ警音器を鳴らし、減速徐行するなどして、事故の発生を未然に防止すべき法律上の注意義務があるものというべきであるところ、前認定事実によると、同控訴人には、右注意義務を怠つたことの過失があつたものと認めるのが相当である。

3  したがつて、同控訴人は、民法第七〇九条により被控訴人の後記損害を賠償すべき義務がある。

三  そこで、被控訴人の損害につき順次判断する。

1  逸失利益

この点に関する被控訴人の主張によると、被控訴人が本件事故による傷害のため、将来、係長、課長などへの昇格及び昇給が遅れることにより生ずる逸失利益の損害の賠償を求めるというのであるが、その前提となる昇任、昇給の遅延についての主張事実を推認しうるに足りる証拠がないから、被控訴人の右主張は理由がないというほかない。しかし、被控訴人に前記傷害による後遺障害のあることは後記のとおりであるからこの点は、慰藉料の算定にあたつて考慮することとする。

2  諸雑費

(一) 〔証拠略〕によると、被控訴人が本件事故により入院中に、次の(1)ないし(5)の諸費用を支出したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(1) 三人の子供の預り代 金五万八、四〇〇円

被控訴人が入院していた昭和四四年三月二六日から同年六月二六日までの間、被控訴人の妻ヤツ子は被控訴人に付添い三人の子供は被控訴人の母ハツヱに預けられていたが、その間の預り代として右ハツヱに対し日額八〇〇円の割合で支払つたもの

(2) タオル、ガーゼ肌着などの購入代金 金四、七二〇円

入院中、被控訴人が必要とした、タオル、ガーゼ、肌着、腹帯、ビニール、紙オムツ、オムツカバーなどの購入に要した費用

(3) タクシー代 金五、二六〇円

妻ヤツ子が病院に必要な荷物を運んだり、子供が病院に来た際のタクシー代

(4) ガソリン代 金三、八四〇円

入院中、これに伴なう諸用を被控訴人の娘婿に依頼した際のガソリン代

(5) 被控訴人の栄養費並びに付添人の食事代 金四万一、六二五円

果物その他の被控訴人の栄養費並びに入院中被控訴人に付添つた妻ヤツ子の食事代

(二) 被控訴人がその主張の見舞茶菓代および退院祝代金一、三六〇円を支出した事実はこれを認めるに足りる証拠がない。

(三) そうすると、被控訴人が支出した諸費用の損害額は右(一)の(1)ないし(5)の合計金一一万三、八四五円となることが計算上明らかである。

3  過失相殺

〔証拠略〕によると、被控訴人は本件事故現場の道路を横断するに際しその東方六・八メートルのところに横断歩道の道路標示が設けられていたのに右横断歩道を通らず、かつ、進行車両の有無を確認することなく漫然と横断を開始して本件事故に遭遇したこと、なお、被控訴人は本件事故当時、飲酒酩酊していたが泥酔というほどの状態ではなかつたことがそれぞれ認められ、原審における被控訴人本人尋問の結果中、右認定に反する部分は前記各証拠にてらしたやすく採用できず、他に同認定を左右するに足りる証拠はない。右認定事実によると、本件事故の発生については、被控訴人にも近くに横断歩道があるのに右横断歩道外の箇所を安全確認を欠いたまま横断した過失があつたものと認めるのが相当である。

そして、前記二の1で認定した控訴人佐伯崇裕の過失と被控訴人の右過失並びに本件自動車の車種その他すでに認定した諸般の事情を斟酌すると、本件事故発生についての控訴人崇裕と被控訴人の過失の程度の割合は各五割と解するのが相当である。

したがつて、被控訴人の前記諸雑費の損害額合計(2(三))につき右の割合により過失相殺をするとその額は金五万六、九二二円(一円未満切捨て)となることが計算上明らかである。

4  慰藉料

(一) 前記一の事実に、〔証拠略〕を総合すると被控訴人は事故当日の昭和四四年三月二五日意識不明のまま宮崎県立宮崎病院に運び込まれて同年六月五日まで同病院に入院し、同日、宮崎温泉病院に転入院し同月二八日同病院を退院して以後は同病院に通院していたが同年一一月一五日、症状固定により治癒と診断されたこと、しかし骨盤ことに股関節部の骨変形、股関節の機能障害(可動制限硬著)並びに頭痛、思考力減退、めまいなどの後遺障害が残り、その障害等級は、股関節の部位に関しては自動車損害賠償保障法施行令別表の一〇級に頭痛感等に関しては同一二級に相当しこれらを併合すると同九級に相当し、このような状態が少なくとも事故後五年ないし七年位は続くことが予測されること、しかし、現時点ですでに頭痛はなくなつていること、被控訴人は昭和四四年七月から勤務に服しているが右の後遺障害による労働能力の低下などのため、事故前と同程度の職務に従事することは困難を伴い、今後、昇任、昇給なども他の者より若干遅れ、したがつて、これらのことが給与、賞与、恩給などに直接、間接に影響を及ぼすであろうことは推測に難くないことがそれぞれ認められ、〔証拠略〕にてらしたやすく採用できず、他に同認定を左右するに足りる証拠はない。

(二) そして、右の事実とすでに認定した諸事実(被控訴人の過失を含む)その他一切の事情を考慮すると、本件事故により被控訴人が受けた精神的苦痛に対する慰藉料は金一二〇万円をもつて相当とするものと認める。

5  損害のてん補

被控訴人が、本件事故に基づく損害のてん補として自動車損害賠償責任保険により、合計金四五万〇四五〇円の支払いを受けたことは被控訴人において、これを自認するところであるから、これをもつて前記過失相殺後の諸雑費の損害額金五万六、九二二円と前記慰藉料金一二〇万円の合計額一二五万六、九二二円の弁済に充当すると、その残額は金八〇万六、四七二円となることが計算上明らかである。

6  弁護士費用

〔証拠略〕によると、被控訴人は控訴人佐伯崇裕が本件事故によつて生じた損害の賠償をしなかつたので被控訴代理人弁護士小倉一之に対して本件訴訟を委任し、同弁護士との間において、着手金として金七万円、成功謝金として金一八万円を支払うことを約し、右着手金の支払いをなしたことが認められる(これを左右するに足りる証拠はない)ところ、被控訴人の損害額の残額が金八〇万六、四七二円であることは前記のとおりであつて、これに諸般の事情をあわせ考えると控訴人佐伯崇裕の負担となすべき右弁護士費用の額は金一二万円をもつて相当とするものと認める。

四  そうすると、被控訴人の控訴人佐伯崇裕に対する本訴請求は、前記三の5の金八〇万六、四七二円と同6の金一二万円との合計額であることが計算上明らかな金九二万六、四七二円及び右金八〇万六、四七二円に対する本件訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和四五年七月一一日から右金一二万円に対する原判決言渡しの日の翌日であることが記録上明らかな昭和四八年五月一六日(被控訴人の請求による)から各完済までいずれも民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度においては正当としてこれを認容すべきであるが、その余の請求は失当としてこれを棄却すべきである。

第二  被控訴人の控訴人佐伯光信に対する請求について

一  本件事故の発生については、前記第一の一のとおりである。

二  同控訴人の運行供用者責任について

1  同控訴人は、原判決事実摘示中の前記付加前の請求の原因三の(一)の事実を一旦認めたが、後にその自白を撤回し、前記付加後の右請求原因事実を否認する旨陳述するので、右自白の撤回が許されるか否かについて検討する。

(一) 〔証拠略〕によると本件自動車は、控訴人佐伯崇裕が昭和四四年三月初めころ、レジヤー用として、分割払いの約束で買い求めたものであるが、同控訴人は当時満二〇年で銀行取引もなく、かつ信用もなかつたため、父である控訴人佐伯光信の了解を得ることなく、同控訴人名義でこれを買い受けたところから、その所有者登録名義人は、同控訴人となつていたこと、控訴人光信は同崇裕と同居して同一世帯で主として農業に従事していたが、本件自動車の購入代金は、控訴人崇裕が西松建設などで自ら働いて得た金員によつて六、七回に分割して支払い、控訴人光信はこれを支出していないこと、控訴人光信は控訴人崇裕に当初から自分の名義を使用することを許していたわけではなく、後日同控訴人からその事実を知らされ、やむなくこれを承諾したものであること、本件自動車は控訴人らの居宅の庭の一部において保管されていたが控訴人光信は運転免許証を有しなかつたところから、本件自動車を運転したことはなく、また、これに同乗したこともなく本件自動車は、専ら控訴人崇裕が自由にこれを運転、使用し、その管理費用なども一切同控訴人が支弁し、控訴人光信において本件自動車の使用、管理などに関与したこともなかつたこと、そして、本件事故の発生も、控訴人崇裕がみずからの意思で本件自動車に同控訴人の知人を同乗させ、同人をその用事先である小林市へ送つて行つた帰り途での出来事であつたことがそれぞれ認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によると本件自動車は、前記所有者登録名義にかかわらず、控訴人崇裕の所有であつて、同控訴人がこれを自己のために運行の用に供していたものであること、控訴人光信は、本件事故発生当時本件自動車の運行を支配していなかつたし、また、本件自動車の運行による利益を享受してもいなかつたことがそれぞれ明らかである。

したがつて、控訴人光信の前記自白は真実に反するものといわなければならない。

(二) 本件記録によると、控訴人光信が原審第三回口頭弁論期日において、本件自動車の所有者として自動車損害賠償保障法第三条による損害賠償義務のあることを一旦認めたが、同第一一回口頭弁論期日において本件自動車は「被告光信の名義で購入し、その代金も被告光信の名義で支払つたものであるが、実質上の買主並びに代金支払者は被告崇裕である。」と主張し、本件自動車の保有者たる運行供用者としての責任を争うに至つたこと、にもかかわらず、原判決においては、本件自動車が被告光信の所有であり、同被告がこれを自己の運行の用に供していた(もつとも、これだけでは単に保有者としての事実上の主張にすぎない。)ことは同被告においてこれを認めた旨の事実摘示がなされていること、そして控訴人ら代理人は、当審第一回口頭弁論期日において、原判決の事実摘示に基づいて、原審口頭弁論の結果を陳述し、右摘示事実を自白したが同第四回口頭弁論期日において被控訴代理人が同摘示事実に前記のとおり付加したうえでこれを陳述したところ、右自白を撤回し、同主張事実を否認したこと、控訴人らは、原審においては本人訴訟であつたが、原審判決後、弁護士佐々木曼に本件訴訟を委任したこと、同控訴人ら代理人は、右自白撤回前、当審における控訴人ら各本人尋問により控訴人光信に本件事故の運行供用者責任がないことを立証しようとしていることがいずれも明らかである。そして、右の事実に弁論の全趣旨及び前記自白が真実に反したものであることをあわせ考えると、当審第一回口頭弁論期日において控訴人ら代理人が原判決事実摘示のとおり原審口頭弁論の結果を陳述することによりなした右自白は錯誤に基づいてなされたものと推認することができる。

(三) そうすると、控訴人光信の前記自白は真実に反し、かつ錯誤に基づくものとしてその撤回が許されるものというべく、したがつて、右自白にかかる事実は同控訴人により否認されたこととなる。

2  そして、本件自動車が控訴人崇裕の所有であつて、同控訴人がこれを自己のために運行の用に供していたものであること、控訴人光信が本件事故発生当時、本件自動車の運行を支配していなかつたし、また、本件自動車の運行による利益を享受してもいなかつたことは、いずれも前記のとおりであるから、これらによると、控訴人光信を目して、本件事故発生当時本件自動車の保有者であつたとなすことはもとより、その運行供用者であつたとなすこともできない。

3  そうすると、本件事故発生当時控訴人佐伯光信が本件自動車の運行供用者であつたことを前提とする被控訴人の同控訴人に対する本訴請求はその余の点について判断をするまでもなく、すでに右の前提において理由がないから、これを棄却すべきである。

第三  それで、右と一部結論を異にする原判決中の控訴人佐伯崇裕敗訴の部分を主文第一項の1、2のとおり変更し、右と全部結論を異にする原判決中の控訴人佐伯光信敗訴の部分は不当であるから民事訴訟法第三八六条にしたがつて、これを取り消すこととし、訴訟費用の負担につき同法第九六条、第八九条、第九二条本文を、仮執行宣言につき、同法第一九六条第一項、第四項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 桑原宗朝 大西浅雄 川端敬治)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例